日々の妄想の墓場。
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髪を切ってきました。
美容院のお兄さんにも『相変わらず切るのに潔いねぇ』と言われました。
俺は面倒だからの一言でがっさがっさ切ってもらう方なんですが、年齢を考えるとどうやら珍しいそうです。
ヒャハハハハ前髪だけはいくらでも伸びるぞ!
でも俺は自分はオールバックが一番似合うと思ってます。
なので常にシャンプーカットしか頼まない。
もうメニューも店員に覚えられた。
本日はどうされますかはスルーの質問になっている。
続きに時代劇の続き。
続けてーって言われたから書くよ。
拍手でもなんでもGOサインさえ出されたら書いちまうさ!
えーウルフが超親父です。ウルフの一時の女としてオリキャラが出てます。妄想御免!
白銀のような月が見降ろす地上。
今は夜の世界。暗く静かな月光が差す闇の時間。
ぼんやりと頭の隅がその闇に溶けていく。
「・・・飲み過ぎたか」
だが言うほどは俺様は飲んでいない。
気分はせいぜいほろ酔い気分で呂律もしっかりしてるし、座って飲んでいるとはいえ立ってもふらつくことなく歩けるだろう。
「酒、か・・・」
増していく闇の中、自然と湧き上がった思い出に暫し心を浸らせた。
若い自分。
ずいぶん昔だ。まだちゃんとした神の姿であった頃。
隣には若い女。
若い、というより幼い。だがその垢抜けた顔は好きだった。
『天(あめ)』
女が俺様を呼ぶ。
鈴を転がしたような声。
『道主日女命(みちぬしひめのみこと)・・・俺様は天目一箇神(あめのまひとつのかみ)だ』
『天でいいじゃない』
『よくねぇ』
『私のこともそんな長い名で呼ばなくていいのに。』
『じゃあアメノミチヒメ、か?変わらねぇだろう』
『もう、そうじゃないわ。日女(ひめ)でいいの』
なぜこの女が自分の傍にいるのか分からなかった。
だが気が付いたら自分はこの女に会いに行き、女からも俺様に会いにきた。
『そういえば天、また名が増えたね』
『今度は一目連(いちもくれん)だと。一つ目の呼び名ばかりだ』
鍛冶という職業上、片目は免れない。
それがどうだというわけではないが、人間は敬って俺様を『一つ目』と呼ぶ。
『一目連、よく似合っているわ』
『そーかよ』
『だって、台風だもの』
『あ?』
にこにこと女が笑いかける。
何が楽しくてそんなに笑っていやがるんだか。
『人間はあなたの隻眼を台風の目と掛けているのよ』
『フン、勝手な言いがかりだ』
『台風は神風なのに』
『俺はそんなもんになった覚えはねぇな』
台風は破壊して搔っ攫い洗浄するもの。
俺様は鍛冶で良い。それだけで。
『・・・ねぇ天、手を繋いでいい?』
『は?何言って・・・』
『えい』
『なっ・・・!』
ぎゅっと小さな両手で包み込むように左手を握られる。
女の手は白くて柔らかい。こっちがちょっとでも力を込めたら壊れてしまいそうだった。
『何なんだ・・・ったく』
『鍛冶師の手、一回触ってみたかったの』
『なんだそりゃあ・・・』
俺様の手の骨ばったところや、硬い指先を陶器のような指が滑っていく。
女からは甘く柔らかな香りがする。
花の香りと、どこか落ち着くようなほんわかした女の香り。
『・・・私、天にこうして2人きり会えるの、今日が最後』
『あぁ?』
『もっと、こうしていたかったのに。刹那ってこういうのを言うのね』
残念そうな、寂しそうな鈴の声色が鳴る。
不意に女の手が俺様から離れた。
『おい、日女』
『ごめんね、私もう行かなきゃ!じゃあ・・・』
『おい!』
『さよなら・・・』
ふわっとどこからともなく花びらが舞う。
はっと気がつけば目の前に女はいなかった。
『一体どうしたっていうんだ・・・』
女がおかしかった理由が、しばらくして分かった。そしてなぜもう会うことができないのかも。
女が、父親のわからない子どもを産んだ。
父親は―――俺だった。
いや、俺以外を認めたくなかった。
父親に注ぐための盟酒を持った子どもは、以前の女によく似ていた。
この時あった女は凛とした、母の顔をしていた。
もう会えないのは、女が俺じゃない男の所へ嫁ぐということ。
相手は大物主大神(おおことぬしのみこと)。かの有名なスサノオだ。
女を幸せにできるだろうと、俺様は思った。思いこんだ。
勝手に産んだ子ども(おそらくあの手をつないだ時にできたのだろう)を俺様に押しつけることも、別の男に女が渡っていくことも、俺は何も咎めなかった。
ただ女が幸せであれば。
それだけをただ人間のように願った。
自分は女のことを愛していたかどうかはわからない。
だが、女が俺様を好いていたということだけは、子どもが証明している。
だから俺は、何もできなかったかわりに女によく似た子供を引き取った。
この小さな生き写しは俺の手で幸せにしてやるのだと、心の奥で誓った。
流れてくる風の噂で結婚した女に新たな子ができたと聞いた。
『幸せに、なったんだな』
今頃は俺様と同じように小さな我が子を腕の中で抱いていることだろう。
自分も―――幸せだった。
「――――と、いけねぇ」
うたた寝しかけていた頭を起こす。
窓の外の月はかなり傾いている。
輪(りん)はもう部屋に戻った方顔を上げてみればこてんと丸まった姿が目に入った。
「・・・このガキ・・・」
本当にいつまで経っても変わらない。
俺が神を捨てた日からずっと。
「だからって男の部屋で寝るなよ・・・」
呆れ交じりの溜息を吐きつつ、輪を抱き上げた。
流石に床に転がしたままにするわけにもいかない。
ふと記憶と重なったふわいとした香りが鼻孔をくすぐった。
甘い、女の香り。
「ん、ん・・・」
抱き上げたせいか輪が少し声を上げた。
だが、それは幼子がむずがるのと同じようなもので、起きることはない。
くぅくぅと眠るその顔は、預かった時からなんら変わらない世間知らずの幼さがあった。
苦笑ともつかぬ曖昧な笑みを浮かべつつ、静かに輪を自分の布団に寝かせてやる。
そのまま自分は皿と杯を台所に持っていこうとして、ぴたりと動きが止まった。
「ァん・・・?」
振り向けば着物の裾をがっちりと掴まれている。
眠ったままの輪に。
こうなったらもう外れない。過去の経験でよく知っている。
「ったく・・・しょうがねぇな」
掴まれている裾を引っ張らないようにして自分も横になる。
動けないのだからしかたがない。キセルも酒も間合いの外だ。
だがぎりぎりで輪の布団には入らない。入ってたまるか。流石に朝起きて時に変態呼ばわりはされたくない。
酒が入っているとはいえ流石に冷えるので羽織を掛け布団代わりに自らにかけておく。
目の前には、どこか満足そうな我が子の寝顔。
「・・・嫁なんざ、まだ早いよなァ・・・」
寝顔に添えられた白い花に、もひとつ溜息を吐く。
腕を伸ばし、花を2本の指で挟むようにして抜き取ってその辺に投げる。
邪魔だ。
明日は街に出るついでにかんざしでも買ってきてやろうか。
柄にもなくそんなことが頭に浮かぶ。
思えば今まで輪に女らしいものを買ってやったことなどほとんど無いような気がする。
本人もたいして欲しがらなかったし、それよりも刀や剣の方に興味があったからだ。
それが逆に世間知らずの箱入り娘を作ってしまったんだから、笑い草もいいところだ。
箱入りでも、不幸になるよりは良い。
輪を育て始めてから、自分がこんなにも誰かに優しくなれるのだということを初めて知った。
その礼とでも思えば、かんざしぐらい買ってやってもいいだろう。
少々強引に思考にケリをつけて目を瞑る。
部屋に2つの安らかな寝息が重なった。
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