日々の妄想の墓場。
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初心に帰るって難しいものです。
中学とかの時のガッツとくだらないほどに湧き上がるネタの数々は今どこに。
ああ、年は取りたくないものだ・・・。
なんか清純な話か暗いパラレル話が書きたい気分です。
清純な話だったらカプじゃないキャラの話を。
ウルフとトワプリリンクの狼同士のとか。
暗いパラレルなら見世物小屋に売り飛ばされたピットとか。
ああこれじゃあパルテナ様が速攻で助けに来るなぁ。
要は、何か書きたい、それだけ。
とりあえずウルフさんとトワプリリンクの話をポイしときます。
春の夜空というのはよくよくみればくるりと丸くなっている。
ドームの様に程よく張ったような空は無数の星に貼り付けられ、そのどこかゆったりとした感じを思わせた。
その中につるりと光る月がある。
緩やかな空に、ぽんと輝ける満月はよく映える。
「良い月だ・・・」
ウルフは月光に目を細め、部屋の明かりを落とした。
薄暗い部屋に淡くも真っ直ぐな輝きが窓の周囲を照らす。
窓を開き、窓際の縁に腰をかけ、左膝を立てた。
その足を支えとして左腕をその上に乗せる。
逆の手には酒瓶とグラスを持ち、グラスのみを窓の縁に置いた。
グラスは月明かりと反射とも透過とも取れる形で反応する。
その明かりを揺らすように、酒がグラスに注がれていった。
とくとくとく。
純水のように透き通った酒はグラスの中の氷を分け入り、溜まっていく。
酒瓶を足元に置き、月に向かって乾杯をするように氷を傾けた。
酒を喉に染み渡らせば、心地よい熱が胃に流れた。
ほぅ、と自然と顔が笑みを浮かべる。
さらに満足するために、胸のポケットに左手を突っ込んだ。
そこから1本の葉巻とジッポを取り出して酒で僅かに濡れた唇に葉巻を咥える。
火を点して一息吸った。
形の無い苦味が舌から肺までをくねりながら広がる。
良い月に美味い酒に気に入りの葉巻。
極上の一時と言っても過言ではない。
ゆったりと葉巻の煙をたゆたせながら酒を飲んだ。
「今は喫煙中だ」
悦に入った声でドアの向こうにいる者に呼びかける。
呼びかけるというより、今の部屋の空気を壊されたくない故の牽制。
ドアの向こうの者はドアノブから手を放し、トンと音を立てた。
続いて着地するような、音がドア越しに届く。
恐らくドアを背もたれに座り込んだのだろう。
ウルフはそれ以上構う事無く再びグラスに手を伸ばした。
純粋に美味を感じ、月の光と同じように酔いしれる。
ようやく1本目の葉巻を吸い切り、灰皿にすり潰した。
「終わったぜ」
新しい葉巻の代わりにグラスを口付ける。
暫しの沈黙の後、ドアの向こうから声が返ってきた。
「・・・俺は、一時期、狼だったことがある・・・」
ぽつりと、独り言の様に呟いた。
「四足の、狼だが。・・・牙もあった・・・遠吠えもできた」
ウルフは窓縁から降りてドアに向かった。そして問答無用でそのドアを開く。
その足元には突然背もたれを無くして、中途半端によろけた格好の勇者がいた。
「今日は吠えたくなるほど良い月だぜ」
見るか、と。遠回しに部屋に入ることを促した。
リンクは目だけで笑って立ち上がり、部屋の中へと足を進める。
「ああ、・・・確かに、良い月だ・・・」
窓の奥の月を見て勇者が感嘆の声を漏らした。
ウルフはそのまま窓の縁に手をかけ、ぐっと身を窓の外へと反らして。
弦を極限まで張り詰めさせたような、月に響く余韻のある声で、吠えた。
狼の月下の宴
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