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日々の妄想の墓場。
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日が暮れたら底冷え地獄です。
そんなに俺の足元を冷やしてどうしようというのだ。
おかげで足首の内出血が治らない・・・。

こつこつと波乱万丈なことが起きている世界ですが、自分の周りには特に何も無いのでのんびりと過ごしています。
そろそろ今プレイ中のオーディンスフィアもクリア間近ですし!
このゲームはグラフィックがきれいな分処理落ちが少々きついのが難点ですが、それ以外は特に目立った問題もなくやりやすいものです。
時間区切りができるゲームなので楽ですね。
キャラも個性がありすぎてシリアスなシーンなのにキャラの口調で笑ったりします。

真剣なシーンでポエマー属性を出すヒーロー。狙ってるのか貴様。

今日中にクリアできるかな・・・。


続きに時代劇小説。結局時リン登場させました。



狼の言うとおり、夏の終わりだというのに桜は咲いていた。
ただ良く見るような白桃色ではなく、翠緑のような色をしていた。
木の斜め下に日傘を差し、弁当を広げ花を見上げる。
俺の正面には黒い着物に紫の光沢ある着物を羽織った狼。
その左隣に浅黄色の着物にかんざしを光らせたお輪(りん)。
親子と言われてもあまり似ていない彼らだが、こうして普段の様子を見ていると、はやり家族なのだなぁと思う。

「狐・・・どうした・・・?」

狼に弁当の中身をよそっていた輪が俺の方を向く。

「なんでもないよ。それよりこの卵巻きおいしいね」

やや厚巻きな卵を頬張りつつ、返事をする。
やや塩が多い気がしたが、それはおそらく酒を飲む狼の口に合わせて作ったからだろう。
狼は狼で酒と輪の料理を交互に口に運んでいる。
ふわりと舞った緑の花びらが狼の杯に浮かんだ。

「狼、よくこんなところ知ってたな」
「ここは古い地主神が未だに守ってるところだ。だから昔から変わらねぇ」
「地主神?じゃあ鎮守神じゃなくて?」

地主神とはその土地に住む守り神。
鎮守神は地主神を抑え建造物に対して祟りを起こさせないようにした神だ。
まれに地主神が反抗をすることもあるが、一度従ってしまえばもう抗うことはできない。

「人間の建造物はこの土地には建てられねぇからな」
「・・・なんで・・・?」

人間のことに疎い輪が聞き返す。
数年ぶりの外出を聞いた時はまさか、と思ったが今日一緒に外を歩いてみて良く分かった。
箱入り娘にも程がある、と狼に言うと彼も珍しく目を細め苦い顔をしていた。
狼は酒に浮いた花びらを弄びつつ、話す。

「向こうに大きな桜の木が見えるだろう。あれが御神木だ」
「桜が御神木?」

ぱっと咲き潔く散る桜が御神木とは珍しい。

「まぁ、神籬(ひもろぎ)と言うやつだ」
「神社以外で神を招くための依り代ってこと?」
「・・・どういうこと、なんだ・・・?」

怪訝な顔をする輪に狼が続けて話していく。

「つまりだな、ここは人が入れたが支配することのできない地だということだ」
「ああ、だから地主神のままなのか」
「・・・よくわからない」

尚も首を傾ける輪に狼が俺を顎で指す。
どうやら自分は酒を飲みたいから後は俺に説明させる気らしい。

「えーとね、人間が立ち入れば建物が造られる。これは分かるよね?」
「ああ」
「だけど土地を守っているのは地主神だから、人間は建物を立てられないだろう?」
「・・・その辺は、分かる」
「だから人間は地主神よりも上位神である鎮守神に地主神を支配させる」
「・・・無理やり、じゃないか・・・」
「そう。一度支配された地主神は鎮守神に従わなくてはいけない」

力が全てなのだと言いたいわけはないが、つまりはそういうことなのである。
そうやって人間達はいくつ土地を支配していったことだろう。

「でもね、きっとここの地主神は強かったんだろうね」
「強かった・・・?」
「鎮守神に勝った地主神は人や物を祟る。それを鎮めるために人間は神籬を置いて地主神を宥めたんだろう」
「それが・・・さっき言った御神木の桜・・・なのか」
「そう。きっとそれ以来人間はこの中に入れないんだろうね」

幼子に言い聞かすような口調になってしまったが、要はこういう話である。
輪は興味深気に聞いていたが、ゆっくりと地面を見つめそこに生えている小さな草花に触れた。

「・・・強いんだな、お前たち・・・」

草花を優しく愛でる姿は息を飲むほど美しく見える。
この飲んだくれの狼が育てたとは思えないほどだ。

「・・狐、今なんか失礼なことを考えてなかったか」
「いや、輪はきれいだなぁと思ってた」
「どっちにしてもぶっ殺すぞてめぇ」
「お、親分?」

和やかな空気の中、冗談に聞こえ辛い台詞に輪が狼を見る。
ああ、せっかくの眼福だったのに。




食事も一通り済ませ甘味も食んだ頃、輪はうとうととまどろんでいた。
ふわふわと舟を漕ぎ、とろんとした瞳を何とか開いている状態だ。
弁当の準備で朝早かったのかな、とその顔を眺めながら思う。
輪と二人っきりなら肩なり膝なりでも貸すけれど、流石に父親の前でそれは出来ない。

「輪、眠いか?」
「ん・・・少し・・・」
「じゃあ寝てろ。帰る頃に背負うのは御免だからな」

狼がぶっきらぼうに言い放つ。

「じゃあ俺が背負っていっ・・・ハイ、冗談です・・・」

およそ殺気を帯びた目に睨まれ、俺の口は閉じてしまう。
狼も御免だ、なんて言っておきながら実際輪が眠ったら背負うのだろうな、と思う。
むしろ負うた子は背負いっぱなしにするんじゃないかと妙な不安まで生まれてしまう。
不器用な溺愛の仕方はまさに狼の性格をよく表していた。

「俺ちょっと御神木見てくるから、お輪はその間寝てなよ」
「・・・そう、する・・・・」

眠たそうに目をこすり、歩き出した俺に緩く手を振る。
本当は寝顔も見てみたいけど後ろの父親が去れ、という顔をしているからそれは叶わない。
いつになったら俺は狼のお眼鏡に適う事やら。
溜息を一つ吐いて、ゆっくりと御神木へ向かった。


御神木、というには何の変哲もない注連縄(しめなわ)が張ってあるだけの桜だった。
変わらず花びらの色は緑だったが、それはここに生えるどの木も同じこと。
御神木にそっと触れ、僅かに撫でる。
伸びた枝の先に咲いた花を噛んでみても、やはり変わった味もしない。
やっぱりただの木か、と手を放した瞬間声が聞こえた。

「おいしかったですか?」
「っ誰だ!?」

辺りを見回しても誰もいない。
となれば桜が喋っているのだろうか。

「私です」

それはひょいと桜から抜け出すように俺の前に現れた。
隠れることもできないほど細い木の幹から影が分かるほどの薄い緑の布に阻まれた者が出てくる。
俺の目の前ですすす、と布は開いていく。

「・・・っ!?」

俺はそれに顔を見て言葉を失った。
それは俺の顔を覗き込むと、にこ、と優しく笑う。
輪に、よく似た顔で。

「ぉ・・・り・・ん・・・・」
「リン?良く分かりましたね、私の名前」
「え・・・?」

混乱にさらに混乱を重ねるようなそれの言葉。

「ああ、傘が邪魔ですね。落としましょうか」

そう言って頭に乗せていた傘を地面へと落とす。
布がくしゃくしゃになるぞ、とも言えない。
はっきり見えたその顔は背筋が凍りそうなほど、輪に似ていた。

「初めまして、琳(りん)と申します」
「え、は、初め・・・まして・・・」
「いきなりですが、耳としっぽが見えてますが良いのですか?」
「えっ!?」

慌てて頭と尻を触る。
驚きすぎて変化が解けていた。

「お稲荷・・・狐さん、ですか?」
「あ、ああ・・・そっちは何者だ?」
「私は―――桜の精とでも思ってもらえれば」
「・・・それは嘘だろう」

服装もそうだが、何より感じる気配が精霊などのものではない。
むしろ狼に近い―――神の気配を感じる。

「神様?」
「分かりますか」
「俺・・・いや私は稲荷神眷族の神使。ご無礼を致しました」
「私はすでに役目を失くした神。そのような畏まり方は要りません」
「・・・ではなんと呼べば?」
「琳でお願いします。あと、もっとくだけてください狐さん」

球を転がすような声が吹きこむように俺の耳に届く。
名前も姿も、本当に輪によく似ている。

「まだ、驚いた顔をしていますね」
「・・・俺の知り合いによく似ているから」
「どんな子ですか?」
「輪といって・・・その・・・可愛い人だ」

どう形容したものか迷って、結局可愛い人、などと言ってしまった。
案の定、琳と名乗った神はくすくすと笑っている。

「ふふ・・・私は男ですが、それに似ているので?」
「・・・お、男!?」

俺はもう一度彼を凝視した。
男と思って意識すれば、確かに男なのだろうと思える程度。
何より服装が別大陸の女の服装によく似ているし、顔も早々見ないほど美人だ。

「まぁ、神ですから性別なんてどうにでもなるのでしょうけれど」
「えっと・・・無礼なことを言って、すみません」
「いいですよ。あともっと親しく話してください。狐さんと話すのは初めてなんです、私」

そりゃあそうだろうと思いつつ、眼は琳を追ってしまう。

「あの・・・なんでこんなところに?」
「人気のないこの御神木は、こっそり降りてくるのにちょうどいいんです。それで花の精を気取ってみたりして遊んでたんです」
「こっそりって・・・」

美しい旋律のような声で悪戯っ子のように微笑む。
なんだか、彼が誰でもいいような気がしてきた。

「狐さんはなんでこんなところに?」
「あー・・・ちょっと花見に」
「お連れの人は、あなたの可愛い人ですか?」
「いやついでにその人の父親も一緒で・・・って俺『の』って・・・」

誘導尋問の如く、こちらのことを聞きだされてしまう。
それも世間話のように笑いながら訊かれるからつい喋ってしまった。

「ここの桜、きれいですからね。ゆっくり楽しんでいってください」
「ああ、そうさせてもらうよ。・・・琳様はいつもここに?」
「様は要りませんよ。時々訪れます。あまり長くこの世界には出て来れないので」
「そう・・・。今日は出ても大丈夫なのか?」
「ええ。私、人を探しているんです」
「人?それなら俺も同じだ」

不意に父親のことが思い出される。
手掛かりと言う手掛かりもなくただ探し続けそれに明け暮れる日々。
彼も同じようなことをしているのだろうか。

「狐さんは誰をお探しなので?」
「父親なんだ。先代の稲荷で・・・」
「・・・私は妹を、探しているのです」
「妹?」
「会ったことは、ないのですけれどね」

会ったことのない人を探すなど、できるのだろうか。
神ならばあるいは、と思ったけど下界に満足に来れない人が探すのは容易なことではないだろう。

「どうやって見つける気なんだ?」
「妹は母に似ているそうなので、記憶を頼りに見つけます」
「曖昧だなぁ・・・」
「でも、探す内にあなたと出会えた。これはとても嬉しいことです」

突然の言葉に頬が少し赤くなる。
女性と見紛うばかりの美人にあなたと会えて嬉しい、なんて言われれば照れるのも仕方のないことだ。

「俺でよかったらいくらでも話し相手になるよ」
「ありがとうございます・・・」

嬉しそうに笑う彼は確かに輪とは違う。
彼にはどこか言い知れぬ寂しさの影のようなものを纏っているようにも見えた。

「あの、もっとお話を聞かせてください」
「いいよ。そうだなぁ何から話そう・・・」

俺の話に穏やかに微笑む琳。
俺は時間も忘れてとくとくと話し込んだ。
ざわざわと周囲の空間が歪んでいくことも気づかずに。







「オイ起きやがれ!」
「ぐぇっ!」

突如腹を踏まれ潰れたカエルのような声が出る。
目を開けば狼が俺の腹を思いっきり踏んでいた。

「ちょっいきなりなりするんだよ・・・」
「輪が目ぇ覚ましたのにてめぇが帰ってこないからわざわざ来てやったんだろうが」
「え、俺寝てたの?」

琳と話していたはずなのに。
周りを見ても狼と輪以外誰もいない。

「・・・狐、疲れてたのか?」

少し気遣うように輪が俺の顔を伺う。
その顔がゆらりと琳と重なった。

「あー・・・いや。大丈夫だよ」
「ったく。もう帰るぞ」
「はい」
「了解」

さっさと歩き出す狼を追っていく。
小走りに足を進め、そっと狼に呟く。

「なぁ狼。お輪に兄っているのか?」
「アぁ?いるわけねぇだろう」
「そう・・・」
「なんだってんだ」
「なんでもない。夢の話だ、忘れて」
「・・・・・・・・・・」

琳が夢幻とは思えない。
また近い内にここを訪れてみよう。
その時、また会えたらいいな。
そう思いながら夕日に照らされ燃えるような赤に染まった御神木を後にした。
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HN:
酒切フータロー
性別:
非公開
自己紹介:
読みはしゅきるふーたろー
よくさけきるとか言われる
紳士なる漢を目指して
女性向け小説メインの
同人活動をしている

現在は関西に仮住い中
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