日々の妄想の墓場。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
バレンタインに12時間も寝るとはどういうことだ。
おかげで1時間も勉強してない・・・ヤベェェェエエエ!
パソコンやってる場合でもないんだけどなぁ・・・。
結局バレンタイン小説完成しなかったし。
この中途半端さが自分を壊してるって分かってるのになぁ。
日曜日は寝れないなーこれ・・。
続きに閑話休題的な時代劇。
琳の過去の独白みたいなもんをどうぞ。
琳は時オカリンクの配役なので時オカリンクといえば神様に振り回されてるイメージがあるので振り回されてもらいました。
この小説だとリンクの親が神様なんだもんなぁ。
リンクの役所、いろいろな説がありそもそも人間だっていうのもあるんでうが、この小説では半神という部類に入れさせてもらいました。
まぁパラレルだからつっこんじゃいけないよと言うことでお願いします。
管理人の想像とするリンクの本音が描かれてますので嫌な予感のされた方、ヤンデレなリンクを見たくない方はすぐさまブラウザをドキュンしてまわれ右をどうぞ。
私の母は、私の母ではなかった。
私の父は、私の父ではなかった。
どちらも親と言う存在に値する人ではなかった。
遠い遠い遥か昔の、葦原中国(あしはらのなかつくに)で人間が水や土地を巡り小競り合いのような戦を各地で繰り広げていた頃。
気が付けば高天原という神々の土地に生まれていた私。
持っている一番古い記憶は眠っている彼女が母に抱かれている姿。
彼女は私の双子の妹。
私達に父親はいなかった。
しかし、父親に当たることになる人物はいた。
スサノオという、荒々しい海の神様。
母と結婚する予定の男。
その男には私達の存在は隠されていた。
あの人は違う、あの人は私達のお父さんじゃない。
私はそのことを知っていた。
妹は知らなかった。
偽の父の顔すら知らない彼女は私と一緒に生まれたのに、常に温室の中で過ごしていた。
1日中真綿を敷き詰めたような場所におり、そこから出ることもなかった。
私には狭い部屋にしか思えなかったが、彼女にとってはそれが世界の全てだった。
その高天原という雲の上の世界のさらに雲の中に、知らずと監禁されていた彼女。
私はいつか彼女と共に世界へと足を出そうと思っていた。
おばあ様やその人に似た女性にしか興味を持たない奔放で子ども様な父。
それに振り回されるように生きるひたむきで不幸な母。
2人を見る度にここにいては彼女には不幸しか待たないと思っていた。
彼女だけは、私が守ろうと思っていた。
このままではあの父親ではない父に、彼女の純潔が奪われてしまうような気がしていたからだ。
まだ小さいのに、気づけば母より美しくなっていく彼女。
私は彼女の笑った顔が大好きだった。
小さな部屋の王女様みたいな生活のせいか、精神は人間と変わらない成長しかしない幼くあどけない妹。
私が、私がずっと守るのだと深く慢心していた。
私にとって、彼女が私の世界の中心だった。
その世界の中心は母と、本当の父の手によって奪われた。
彼女の手を引いて雲の部屋から出て行く母。
彼女を奪われまいと必死に抵抗する私を押さえつける侍女達。
この時ほど、もっと自分に力があればと嘆いたことはなかった。
牢屋に押し込まれ絶望に暮れる私に言った母の言葉は、私にとって母という存在が発して良い言葉ではなかった。
―――わかってちょうだい、あの子はここにいたらスサノオに奪われてしまうかもしれない。
―――本当の父親はとても強い人、その人に任せれば大丈夫なの。
―――お前はスサノオの子となるの。お前は恐ろしい心を持っている。
―――あの子に、もう近付かないで。
守りたいという気持ちの、どこか恐ろしい心だというのだ。
スサノオに引き渡され、彼女と引き離された絶望は七百年続き、その間に身体は立派な青年へと成長していた。
それでも顔だけは母よりなのか、あの女と同じような顔になった。
母は彼女がいなくなってから彼女のことだけを気にするようになった。
私には目もくれず、父スサノオが彼女に近づかないようひたすら働いていた。
次第に母にすら目をくれなくなった父は別の女に走った。
母も新たな味方をつけるべく、別の男の愛人のようになった。
人間ではないが、家庭はすでに崩壊したも同然だった。
そんな中で出会った稲荷の白狐神に仕えるという男。
彼には息子がいたが、自分が神に仕えるために地上に残してきてしまったという。
悔みながらも天からその子を眺め愛しく綻ばせるその顔は、私が長年望んでいた理想の父親の顔だった。
私は彼の息子の話をよく聞いた。
その内に、彼は私を息子と重ねて見ているのだと気づいたが特に悪い気もしなかった。
次第に私は彼の息子に興味を持った。
凛々しく心優しく強く生きる子。
もし本当にそんな人なら、母からも父からもどんな神からも愛してもらえなかった私と仲良くしてもらえるだろうか。
私のこの深い嘆きを癒してもらえないだろうか。
水面下の静かな気持ちであったが、彼の息子に私は心を寄せていた。
その子の見たことすら、なかったのに。
いつか、地上に降りることがあれば息子に会ってくれ。
私はもう地上には降りられない。
どうか彼の人生を彼の好きな人のために使ってほしい。
そう、伝えて欲しい。
私は儚い約束をして、その男を別れた。
もうそれから二度と会うこともない。
その頃、葦原中国の戦はさらに大きくなっていた。
私は異母兄弟とともにそれ抑えるために働いた。
葦原中国は人間が野蛮で争いを繰り返す火の大地と化した。
次第に彼らと私は葦原中国を巡って殺し合った。
私は伯母様と他の神から渡された剣を別の人に渡した。
その剣は私の異母兄弟が手にし、私の別の兄弟を貫き殺してしまった。
妹を奪われ、兄弟が兄弟を殺し。
犯した罪と喪失感に私の心は、もはや死人同然となった。
なぜ、私だけ、こんな目に、会うの?
迷った私のとった行動は皮肉にもおじい様と似たようなことしてしまった。
おばあ様のいる、黄泉の国へと堕ちたのだ。
その国の食べ物を食すれば、肉は腐り落ちうじに這われ見るに堪えない姿になる。
それで良かった。
私を忘れた母や死にゆく兄弟、生きながら引き離された妹の顔を思い出す顔を消してしまいたかった。
黄泉路はおじい様の塞いだ岩で通れなくなっており、私はその岩に体を寄り添わせた。
岩の奥からの穢れが身体に伝わってくる。
黒い斑点ができ、私を犯していく穢れ。
そのまま私は醜いものになっていく予定だったのに、ある時声が届いた。
天の光もない暗い黄泉比良坂(よもつひらさか)で私に語りかける声。
語りの内容は私の妹のことだった。
―――妹は本当の父天目一箇神(あめのまひとつのかみ)に預けられた。
―――地上へと降りたが父と共に何者かに襲われ、狼の力を借りた。
狼の力を借りるというのは分かった。
古くより狐と狼は強い神の眷属。
狐と稲荷と言うように、狼の別名は『大神』。
力を得るには問題ない生きた依り代。
―――妹は幸せに暮らしている。
そこで語りが終わっていれば、私はいくらか安らかな気持ちで穢れとなれたことだろう。
だがその妖魔の囁きは次第に私の心を蝕んだ。
とくとくと語られる彼女の平穏な暮らし、彼女に注がれる愛情、苦しみの無い彼女の生き様。
なぜ、双子なのに、妹だけ、あんなに幸せ?
可愛さ余って憎さ百倍というのはこういうことなのかもしれない。
私のことを露ほども覚えていない彼女。
本当の父に守られ温室を出てなお大きな温室で生きる彼女。
私や兄弟が血や死を拭った土地でのうのうと生きる彼女。
何より、何よりも。
稲荷の、私が心を寄せた彼に好かれているという彼女。
なぜ、私には、愛が与えられないの?
なぜ、私だけ、辛いものを与えられるの?
語りに耐えられなくなった私はその場から逃げた。
それでも心に出来上がった腫瘍のような憎悪の心は消すことができない。
母が言った恐ろしい気持ちとは、もしやこのことだったのかと起こってしまった後で気づいた。
あらゆるものの破壊衝動に駆られた私は、思い悩み、妹に会うことにした。
会えばより憎くなるかもしれないし、逆にこの心が解かれるかもしれない。
賭けだった。
ただその前に、嘘をついてかつて知り合った稲荷の男の息子に近づいた。
私が焦がれた狐の彼は、私の想像した通りの人だった。
強くて優しくて、より一層私は彼に惹かれてしまった。
彼に話したほとんどが嘘。
ひとつ、本当のことを言った。
彼が、好き。
すぐさま彼を奪ってしまいそうになり、慌てて彼を眠らせたが会いたいと思う気持ちは隠せなかった。
そして、賭けだった妹への思いは確定していった。
もう幸せだとか、本当の父と暮らせているだとか、不幸な目に遭っていないとかはどうでもよくなっていく。
私から、彼を奪わないで。
私は、もう一人は嫌だから。
愛しい人のために、かつての私の世界の中心を殺す。
私はきっと、おじい様から続く愛の呪いにかかっている。
おじい様はおばあ様を殺した我が子を殺し、おばあ様を追って黄泉の国へ向かったのに。
約束を破ったせいでおばあ様から殺されかけ、それでも互いに愛の呪いの言葉を吐いた。
父ではない父は黄泉の国に消えたおばあ様を嘆いておじい様に追放され、姉であるアマテラスに狼藉を働いた。
そして、私は。
可愛い愛しい憎い私の妹。
邪魔するなら、あなたを斬ろうと心に誓った。
その時は来た。
誰よりも愛しい彼が私を止めに来る。
彼になら、殺されてもいい。
だけど、彼を他の誰にも奪われるのだけは嫌。
私はすでに岩から伝わる穢れとあの語り声によって祟り神と変貌始めていた。
私が守ることのできなかった愛しい妹。
私の大好きだった笑顔でどうかこの愚かで狂った兄を笑うといい。
最期に、この愛の呪いを授けてくれる。
あなたが決して私が心寄せる狐と結ばれないように。
妹のことが好きな狐さんには、悪いことをしてしまう。
けれど、どうかそれは私の命と引き換えに許してほしい。
「ふぅ・・・」
一つ、ため息を吐く。
目の前には、父と彼女と住む家がある。
あの木製の戸を叩いた瞬間。
もう私は血や戦で神に運命に振り回される哀れな者ではない。
かつての名前を捨て、『琳』という存在になり自分の心によってこの命を燃やし尽す、祟り神となるのだ。
静かに私は足を進めて、戸を叩いた。
PR