日々の妄想の墓場。
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いつもこの出だしの文章をどうしようか悩みます。
有名な人のブログとかは一回しか見たことがないのでよく分からないでのですが、アイデンティティのがっつりしてる人だと毎日ネタに困らないのであろうか。
いま起こっている自分の中の事件といえば、バイト先に友人を見学させにいかねばならないということぐらいだ。
続きにフォックスとシーク&ゼルダで嫁姑戦争(笑)。
無意識。
彼ならば、そうであるという認識。
気が付けば固定化していた概念。
癖というにはしつこいが、さりとて偶然というわけではない。
意識すれば、それらは全て打ち砕かれる。
「フォックス」
リビングでお茶の用意をしていると、何処からか声が聞こえた。
自分の名を呼ばれたのだと、フォックスは振り返る。
「ん?・・・ああ、シークか」
壁際の陰に隠れるようにしてすらりとした彼が立っている。
身体にぴったりと張り付くようなスーツが余計に細く見させた。
「リンクがどこにいるか、知らないか?」
「今洗濯物干してる。もうすぐここに来るよ」
フォックスは言い終えると沸騰しかけのお湯を覗く。
もわもわとポッドから白い蒸気が逃げ出した。
「一緒に飲む?」
「・・・ああ」
ようやくシークは壁際から離れ、席に着く。
その身のこなしのせいか、そこまでの動作でほとんど物音がしなかった。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
お互い普段から特に喋りこむこともないため、自然と沈黙が支配してしまう。
2人とも別々方向を見て、別々のことを考えているのである。
「シーク」
「フォックス」
まるで芝居のように顔がどちらからともなく向き合い、同時に声を発する。
「あ、ど、どうぞ?」
「そちらから、どうぞ」
丁寧な仕草で促され、フォックスはじゃあ、と小さく咳払いをしたあとに問いかけた。
「シークって俺に話しかける時、大体いつもリンクのこと訊くよな?」
「そうか?」
「うん、そうだよ」
身に覚えがない、といった風にシークは首を傾げる。
フォックスとしてはいい加減不思議に思っていたことなのだ。
「多分、気になっているんだろう。リンクのことが」
うんうんと頷きながらシークが結論を出す。
「やっぱり友人だからな、色々と心配だったんだ」
「そう・・・なんだ」
シークの瞳に憂いが彩る。
彼はリンクと長いといってはおかしいかもしれないが古い友人だ。
気にかかるところも多いのだろう。
「リンクにはずっと大変な思いをさせてきたから・・・せめてここにいると時は幸せでいてもらいたいんだ」
「シーク・・・」
「こっちに来てから家事が多いみたいで、まぁ、彼が楽しいならそれでもいいんだ。平和を味わっているのだから」
「そう・・・」
「でも僕もリンクと一緒に平和を味わってみたいけどこの通りの育ちだから彼の仕事を邪魔してしまうかもしれないし」
「そ、そうかな・・・」
「だからよく傍にいるフォックスに様子を聞きに来てしまうんだよ」
「お、俺は・・別に良いけど・・・」
段々とシークの眼が痛く感じてきたフォックスはふっと顔を逸らしてしまう。
シークだってリンクと一緒にいたい気持ちは痛いほどわかる。
けれどシークはフォックスが知りえないリンクの過去を知っているわけで会って。
帰る故郷も同じなわけであって。
決して交わり切れない世界の住人として、フォックスとしては今の内だけでもリンクと仲良くしておきたいのだ。
ある意味、他の人から見たらそれは独占しているようにも見えるだろう。
「えーと・・・遅いな、リンク」
「きっと丁寧に洗濯物を干しているんだろう。僕にはよく分からないけどね」
さっきとは打って変わった穏やかな表情で微笑む。
「そろそろ僕の質問をしていいかな?」
「あ、どうぞ・・・」
先程思いっきり話をしたのにまだ回る舌がすごい。
フォックスは作業をしながら耳を傾けた。
今日のお茶はアールグレイ、良い香りだ。
「なんでゼルダの時にはほとんど話しかけないんだ?」
「え・・・っ!?」
一瞬ドキリとフォックスの心臓が跳ね上がる。
正直、今ここでゼルダに変身されては困るからだ。
「何か困ることでも?」
疑うような声にフォックスは聞こえない程度の小さな溜息を吐く。
暫し耳としっぽの動きを止めて考えた後、シークの方に向き直った。
「他の人には言わないで欲しいんだけどさ」
「うん」
「俺・・・女性がちょっと苦手なんだ」
ぽかん、とシークの瞳が丸くなる。
そしてどこか愉快そうに歪んだ。
「・・・今笑ってるだろ。布で隠してても分かるぞ」
「い、いや・・・そんなことは」
「肩が震えてる」
はぁーと今度ははっきり分かるように額に手を当てて大袈裟に吐く。
「俺は昔から周囲が男ばっかりだったから・・・」
「つまり奥手、というわけか」
「まぁ・・・そうだよ・・・」
しなやかで線の細い顔が白い布からちらりと見える。
くっくっくと笑っても、まるで女性みたいだ。
「シーク、笑い過ぎ」
「じゃあこうしましょうか」
「あ・・・・」
シークを中心にきらりと光の粒が弾ける。
一瞬の眩しさに目を閉じた後、そこにいたのは一人の女性だった。
「あ、あ、あ・・・」
ぱくぱくと金魚のように口を開閉するフォックスに柔らかな笑みを向ける。
「どうですか?」
「どうですかって・・・なんかわかってても緊張するよ」
「ふふ、さぁそろそろリンクが戻ってきますよ」
「・・・お茶の準備ならもう・・・」
「では先に頂いておきましょう」
「え、でも・・・」
「リンクの分もあとで温めたらよろしいでしょう」
堂々と言い放つゼルダにフォックスはたじたじと後ろに下がる。
「わ、わかった」
「ありがとう、フォックス」
花のような微笑みなのにリンクとはまるで違う。
リンクがゆっくりと咲いていく新芽の花ならば、ゼルダは最初から堂々と貫禄を持って咲く白百合のよう。
「はい、どうぞ」
ゼルダの前にお茶を差し出す。
彼女からすれば、おそらく庶民の味と言うものに当たる。
「・・・やっぱり、おいしくない?」
「リンクはあなたが淹れたものをまずいと言われますか?」
「いや、それは言われたことはないけど」
「では、おいしいということでしょう」
ふわりふわりとかわされていく。
上品な人とはこういうことが日常茶飯事なのだろう。
面倒だ、とフォックスは心の中で呟いた。
騒々しいけど男所帯の自分の艦がどれほど楽なのかが分かる。
「フォックスもお飲みになって。私だけでは寂しいわ」
「ああ、今淹れる」
こぽこぽと熱いお湯がカップに注がれていく。
零さないようテーブルに置いた。
ゼルダと向かい合わせになればさらに良く分かる。
紅茶の飲み方から立ち振舞いまで何から何まで違う。
フォックスが溜息と紅茶と一緒に飲み込んだ瞬間、背後の扉が開いた。
「おまたせしました!フォックスさ・・ん・・・」
キョトンとした顔でこちらを見つめている。
ゼルダはしなやかに手を振り、フォックスは気まずそうに振り返った。
「ゼルダ?どうしたんですかこんなところで」
「こんにちはリンク。私も頂かせてもらっています」
「こっちから宮に出向いてもよかったのに」
「いいの。さ、リンクもお茶にしましょう」
「あ、俺お茶淹れるよ。お菓子も持ってくるから――――」
さっと立ち上がって台所に戻る。
残されたリンクとゼルダは見詰め合う。
ゼルダの傍に行き、掌を口に寄せポソッと小声でリンクは囁いた。
同じくゼルダも口に手を当て、少女のように微笑む。
「フォックスさんが女性が苦手だって、言ってたと思うんだけど」
「ええ、本当にそうでした。言質が取れましたわ」
「言質って・・・意地悪しないで」
「意地悪なんてしてないわ、あの耳としっぽが動くのが楽しくて」
「もー・・・」
「独り占めは駄目よ、リンク」
細い人差し指でつんと鼻の頭を突かれてリンクは身体を起こした。
ゼルダは王宮育ちのせいか、女性のせいなのかはわからないが可愛いものが好きだ。
それは全体であろうと部分であろうと変わりはしない。
「かっこいいリンクとのお茶も楽しいわ、もちろん」
「ありがとう、ゼルダ」
「でもたまにはふわふわもこもこの動物も傍で見たいの」
「からかって遊んでない?」
「ふふ、そんなこと」
そんなこと、の後は紡がれなかった。
フォックスが台所から戻ってきたからだ。
「リンク、紅茶――・・・って座ってなかったのか?」
「あ、い、今座ります!」
ぱたぱたと回って座ったのは、フォックスの隣の席。
「あー・・・ゼルダの向かいに座ってもいいんだぞ?俺移動したって・・・」
「いえ、ここでいいんです」
「そうか?」
「私の隣でも構いませんよ」
にっこりと微笑む彼女に彼らは乾いた苦笑いをする。
「今日のおやつは何かしら?」
ご機嫌で微笑むゼルダと、恐縮するフォックス。
そしてこれはこれでちょっといいかも、と思い始めたリンクであった。
お茶の間、ずっとフォックスのしっぽが所在無さ気にリンクの足に触れていたのは、リンクだけが知っている。
「(しっぽの無意識の救難信号、可愛すぎる・・・!)」
「(ゼルダいつまでいるんだろう、せめてシークになってくれれば・・・)」
「(今度は初めから私で遊びに来ようかしら)」
かくしてお姫様の気まぐれは、彼女と勇者をご機嫌にして終わる。
残った狐だけが、ひどく疲れていた。
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