日々の妄想の墓場。
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リアル世界であれこれあっても結局どうにかなってる今日この頃。
よーし、酒もってこーい(お前・・・)。
お年寄りの方にはあらあなたかわいいわねーと頬を掴まれたり(営業スマイルですすいません)。
大柄なセンセには君そんな酒飲みには見えんわーと言われたり。
世の中ギャップだらけです。
だから騙されたり、騙してしまったりもするのです。
最初良く他人に見せるとあとあとが辛くなります。
啖呵切った後だと普通に物事をこなすより気合が入ります。
明日、自分はいったい何を頑張るのであろうか。
よっこらしょ、と言えども歩けるのならそれでよし。気長に生きましょう。
続きにフォリン。狐の壮大なのろけ話です。
フォックスはスマブラの館を朝早くに出た。
元の世界で単発な仕事が入り、金が良かったから請け負った。
稼げるときに稼げる、それは別次元にいても変わることはない。
「じゃあリンク、行ってくる」
「いってらっしゃい、フォックスさん」
見送りは要らないと、ベッドの中で別れを告げた。
夜も明けたばかりで眠いだろうに、とろりとした青い眼が追ってくる。
もう少しその温かみに包まれていたいという甘えを振り切り、行きついた先はグレートフォックス。
指令室の硬い椅子に腰を降ろし、顔を引き締めた。
「ペッピー、任務開始まであとどのぐらい?」
「1時間、と言いたいところじゃがもう30分もない」
「せっかちなことだな」
降ろしたばかりの腰を上げて愛用の戦闘機、アーヴィンに向かう。
今回はフォックス一人の出撃であり、ファルコ達は後方援護という名の留守番である。
あの冷やかす声が任務中に飛び交うのは余裕の表れだからさほど気にしてはないない。
むしろ『後ろを取られた』と告げる皆の言葉がいつも肝を冷やさせた。
だから一人はある意味気楽なのである。
あっという間に30分が過ぎ、アーヴィンは無重力へと飛び出した。
暗い世界の浮遊感に機体ごと包まれる。
飛んでいる、浮いている、進んでいく。
今日も変わらず、破壊していく。
破壊された側にごめん、と思うこともなければ依頼者側によかったね、とも思わない。
撃って壊して目的を成し遂げただけだ。そこに完結はいらない。
「フォックス、やったな!」
「おかえりフォックス~」
「御苦労じゃったの」
艦に戻れば笑顔の仲間が出迎えてくれる。
久々に楽な仕事だったと告げれば、コイツ、とファルコに頭を掻き回された。
「このまま飲みに行こうぜ」
幸いコーネリアから近いし、金も入る。
この夜は皆で食事をすることにした。
豪勢とは程遠いファミレスの一角での食事だったが、言葉では言い表せない満ち足りた、ジェットコースターのような幸せが走った。
「フォックスとファルコはいつ向こうに行くのさ?」
スリッピーがオイラも行けたらな、と口を尖らせる。
お前じゃ2発殴られて吹っ飛ぶ、とファルコが茶化した。
「ファルコ、スリッピー、こんなところで喧嘩は止さんか」
年長者よろしく、ペッピーが制止をかける。
睨み合っていた2人はそろそろと視線を解いて各々の食べ物に目を向けた。
「俺はいつだっていいけど、フォックスはどうすんだ?」
アイスコーヒーを手に持ったまま問う。
「俺はー・・・」
フォークを持ったまま、ぼんやりと天井を見上げた。
不意にリンクの顔が思い浮かぶ。今頃向こうでも食事をしているだろうか。
「俺はなるべく早くに帰るよ」
言葉を紡いだ唇はそのまましまったと言わんばかりに開いた。
自分は今、行く、ではなく帰る、と言わなかったか。
慌ててフォローしようかと思ったが皆気にも留めなかったようでそうか、と返されるだけであった。
「墓参りに行くのかと思っとったが」
枝豆をまさしく兎のように齧りながらしゃべるペッピーに苦笑する。
姿の見えない両親のことは大事だが、今は無性に自分の恋人に会いたかった。
流れるような金髪の頭を撫でて、空の瞳を優しく見詰める。
染み込むように赤くなる頬に口付けをひとつ、後は心臓を重ねるように抱き合う至福を2人で感じる。
フォックスは元来、美しいものが好きだった。
母をあまり覚えていないせいか、男所帯で育ったせいかはわからない。
殊更女性と言うものは苦手、そのくせ美人は好きだった。
空想に恋することもないが、脂肪を垂れ下げた女よりは顔の造形が整っている方が好きだった。
そこを考えればフォックスの好みはまさしくリンクであった。
恋に落ちるのも男同士という壁はあれども素因はあったわけだから、問題無い現象であった。
ゼルダやピーチのように生まれ持っての気品は正直フォックスには必要のないオプション。
その点リンクにも英雄、勇者という運命を背負っていたがそれは彼を構成する根の部分であり、それがなければあそこまで美しくなかったであろうと思う。
すらりとした柳眉、通った鼻筋、食めば敏感な唇に整列した白い歯。
人形のような顔を喜ばせたり笑わせたりして存分に表情を作った。
それを見るのが幸せだった。それだけで満足する心があった。
だから想いが通じた時、フォックスは胸が裂けんばかりに舞い上がった。
告げたのはリンクが先だった。
御免なさい、ごめんなさい、好きなんです――――と。
何を謝ることがあるだろう。
男だから気持ち悪がられる、迷惑がられると考えていたらしい。
それでも告げられずにはいられない欲張りな自分に勝てなかったと。
欲張りで良かった、と思う。
きっと自分からでは告げられない想いであったであろうから。
同時にリンクに自分から言えなかった臆病を恥じた。
だからそれから先は精いっぱい、愛した。
勇者の面を剥ぎ取り、熱っぽい息を吐いて涙を零す彼は殊更美しかった。
きれい、きれいだと何度も耳に吹き込んだ。
自分の目が盲目しているのは分かっている。
だが気づけば最初の頃よりもっとその盲目はひどくなり、熱視線は彼のみに注がれた。
だって愛している、とても真剣に恋しているんだ――――と。
シーツの海で愛しい想いを降り注げば顔を赤らめた恋人が恥ずかしそうに呟く。
「は、恥ずかしいです・・・フォックスさん・・・」
「リンクだけだから、こんなに言うのは」
「よ、余計恥ずかしいですよ・・・っ」
どうしようもなく可愛いと思った。
結局、翌朝には帰ることにした。
ファルコは2、3日ほどふらついてから帰るという。
新しい機種(ファルコはその機械が好きみたいだがフォックスにはどういうものなのかよくわからなかった)が出たから、と。
フォックスは新しいものも好きだ。
機械、服、食べもの。アンティークにはさほど興味は持たない。
スリッピーは意外とそういう古いものに興味があったようだが、フォックスはより刺激や活気のある物が好きなのである。
ならばリンクは。
帰るため、アーヴィンに乗り込むとふと考えた。
伝説や神話の世界に生きる彼だ。彼こそ失礼な言い方だが生けるアンティークじゃないか。
そう思うと笑いが出るほどおかしくなった。
仲間といた時にリンクを思い出したのは一度、だがリンクが傍にいた時は何度彼を思ったことか。
「恋してるなぁ」
まるで他人の恋愛事のように呟いて重力を感じる空を超えて行く。
そして彼におかえりと言ってもらえたら、それはきっと、たまらなくフォックスを幸せにするだろう。
人形のような顔に口付けを落として、今晩も月が嫉妬するほどに抱きしめて眠ろう。
会ってしまえばより、盲目したこの瞳に愛しさが募るのだから。
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